お風呂の排水溝はどんな仕組み?
まずは、お風呂場の排水溝がどのような構造になっているかを理解しておきましょう。多くのお風呂場は、浴槽の排水栓から伸びる排水管と洗い場側の排水管が、排水トラップと呼ばれる部分でつながっています。排水トラップとは、一定量の水が溜まるように作ってある仕組みのことです。どうしてわざわざ水を溜める仕組みがあるのか、不思議に思うかもしれません。これは、排水管を伝って下水の悪臭が上がってきたり、ネズミや害虫が侵入したりするのを途中でせきとめるためです。排水トラップは、お風呂場に限らず、洗面所やトイレなど排水を流す場所であれば基本的にどこでも設置されています。
排水トラップには、いくつかの種類があります。排水管を曲げて水が溜まるようにしてあるものは管トラップと呼ばれています。洗面台の排水管がS字型に曲がっているのを見たことがある人は多いでしょう。キッチンで多いのは、椀トラップ(ベルトラップ)と呼ばれるものです。これは、お椀型(ベル型)のパーツを排水管に被せたような形状をしています。目皿と椀とがネジでとめられているタイプ、別々になっているタイプなどがあります。ユニットバスなどでよく見られるのは、ドラムトラップといわれるものです。これは、排水管の先に小さなタンクのようなドラムがついた構造をしています。長方形の蓋を開けると排水溝になっているタイプは、ほとんどのケースがドラムトラップです。
お風呂がつまる原因には何があるの?
お風呂の排水管がつまる原因はいくつかあります。そのなかでも特に多いのが、大量の髪の毛です。人の髪には、生えて伸び、やがて抜け、しばらくするとまた生えるという自然なサイクルがあります。抜ける髪の数は、性別や年齢に関係なく1日に50~100本程度です。抜けた毛は、すぐに落ちずに髪の間に挟まってついたままになっていることもよくあります。そういった髪もシャンプーをすると落ちますので、結果的にお風呂場の排水口には相当な量の髪の毛が流れることになるのです。
固形物がつまりの原因となることもよくあります。たとえば、シャンプーやコンディショナーをボトルに詰め替えるとき、リフィルの切りとった部分を気がつかないうちに落としてしまうことがあります。また、シャンプーボトルのキャップなどもうっかり落としやすいものです。小さい固形物の場合は、排水管に落ちたからといってすぐにつまりが生じることはありません。しかし、その固形物に髪の毛が絡みついたりシャンプーや石けんのカスが蓄積されたりしてどんどん大きくなり、やがてつまりの原因となることがあるのです。大きな固形物を落とした場合は、すぐに流れなくなることがあります。取れるようであれば取りましょう。しかし、奥の方に入りこんで届かないときに無理に取ろうとするとますます奥に押しこんでしまうことがありますので、注意が必要です。
髪や体を洗うことで流れていく皮脂汚れや垢、そしてそれらをエサにして増える雑菌もつまりの原因です。こういった汚れや雑菌は長い時間をかけて排水管やトラップの内側に蓄積していき、やがてつまるようになります。石けんカスやシャンプーも同様に少しずつ堆積し、そこに髪の毛などが付着して大きなヘドロとなり、つまりの原因となります。
お風呂が詰まったときの対処法!
お風呂のお湯が流れないときは、まず排水口の掃除をしてみましょう。髪の毛やぬめり、ヘドロが排水口に溜まっていることが原因なら、それらを除去するだけで水が流れるようになります。蓋やヘアキャッチャー、封水筒などすべてのパーツを外し、溜まった髪の毛やヘドロを取りのぞきましょう。その後にスポンジやブラシで細部まで擦り洗いをし、ぬめりもしっかり除去しておきます。
排水口をきれいにしてもつまりが解消しない場合は、パイプクリーナー(排水管洗浄剤)を使うのも有効な手段となります。特に、髪の毛が原因であればパイプクリーナーで溶かせますので、つまりが解消する可能性は高いでしょう。使用するときは、排水口にあるパーツをすべて外してから適量を注ぎます。内部に水が溜まっていると薬剤を流し込んでも薄まって効果が減少しますので、できるだけ水が引いた状態で使用しましょう。薬剤を投入したあとは、指定の放置時間を守り、その後にお湯や水で流します。効果が高くなるような気がするからと、指定の時間より長く放置してはいけません。排水管を傷めたり薬剤によって剥がれた汚れがそのままつまりの原因になったりすることがあります。時間はきちんと守ることが大切です。
パイプクリーナーが効かない場合は、つまりの原因は髪の毛などではなく、何らかの固形物が落ちている可能性が考えられます。また、髪の毛にさまざまなものが絡みついて固くこびりつき、パイプクリーナーでは溶かしきれないこともあります。その場合は、ラバーカップを試してみるのも1つの方法です。使用する際は、密着性を高めるためにカップ部分が水に浸かっている必要があります。水やぬるま湯を溜めた状態にしてから排水口をカップでふさぎ、ゆっくり押して勢いをつけて引くことを繰り返しましょう。このとき注意したいのが、ラバーカップは水の逃げ場がない状態で使わなければいけないということです。ラバーカップでつまりが解消するのは、カップの内側に水を満たして一気に引き上げることで水が逆流し、原因となる物質が吸い上げられて動くためです。そのため、たとえば浴槽と洗い場の排水管が繋がっている構造であれば、洗い場でラバーカップを使っても浴槽側に水が逃げていき思うような効果が得られません。浴槽の排水栓をしっかり閉めて水が流れていかないようにしましょう。浴室内に洗面所があるケースも、洗面所の排水管とつながっているのであれば結合部をしっかり塞いでから使う必要があります。
パイプクリーナー―やラバーカップでも無理だった場合は、ワイヤーブラシを使うとつまりを解消できるかもしれません。ワイヤーブラシとは、長いワイヤーの先にブラシがついている道具です。排水管を通ってつまっている物に到達し、直接ほぐしたり崩したりできます。使うときは、排水管にワイヤーを入れて進めていき、何かに当たった感触があったらネジを締めて固定してからグリップを回し、回転させながらさらに進めていきましょう。何度か回転させたらいったん引き出し、流れるか試してみます。これで流れれば良いですが、つまりが解消していないなら、ブラシ部の汚れを拭いてきれいにしてから再び挿入して掃除をしてみましょう。
これまでに述べた方法は、軽度のつまりであれば解消する可能性があります。しかし、大きな固形物がつまっていたり、排水管を長期間にわたって掃除しておらず汚れがかなり堆積していたりする場合は、自力での解消は容易ではありません。ただ難しいだけでなく、事態を悪化させてしまうリスクもあります。たとえば、ワイヤーブラシでつまりの原因を奥に押しやってしまいどうやっても届かなくなったり、排水管が老朽化している場合は穴を開けてしまったりすることもあるのです。排水管は塩化ビニル製が一般的ですが、古い住宅では鉄製のことがあり、そこに塩素系の強力なパイプクリーナーを注ぎ込むと腐食させてしまうこともあります。すぐに修理業者に依頼したら数千円で済んだものが、下手にいじったことで悪化させてしまい、結果的に高額な修繕費用がかかってしまうということがあるのです。自力で修理するのが難しいと感じたら、無理せず専門業者に相談しましょう。
日常的に行う手入れでつまりを予防しよう!
お風呂のつまりは、長い年月をかけて蓄積した髪の毛が原因であるケースがほとんどです。そのため、髪の毛を極力流さないようにすれば、つまりの予防につながります。排水口にはヘアキャッチャーがついていることが多いですが、ないのであれば設置しましょう。排水溝用のネットを使用するのも効果的です。ヘアキャッチャーやネットに溜まった髪の毛は、毎日取りのぞくようにしましょう。どちらもホームセンターやネットショップで購入できます。
パイプクリーナーを定期的に使うのも、予防効果があります。注意書きをよく読んで正しく使用しましょう。パイプクリーナーではなく、重曹と酢を使って掃除する方法もあります。重曹は、ふくらし粉や料理のあく抜きとして昔から使われている安全性の高い物質です。アルカリ性のため、皮脂などの酸性の汚れを中和して落としやすくする働きがあります。また、酢は石けんカスなどのアルカリ性の汚れに効果があります。排水管を掃除するときは、まずは重曹1カップ程度をふりかけ、そこに酢100cc程度を一気に注ぎましょう。すると、互いに反応して泡がシュワシュワと立ち始めますので、しばらくそのままにします。10~20分ほど待ってから40℃程度のお湯で流すと、こびりついた汚れがきれいに落ちて流れていくでしょう。
しかし、日々の掃除をどれだけ行っていても、シャンプーや石けんカスなどの汚れや髪の毛は少しずつ蓄積してしまうものです。そこで、定期的に専門業者に依頼して高圧洗浄機で溜まった汚れをきれいにしてもらうと、予防効果が高まります。高圧洗浄機は市販されているものもありますが、プロ仕様のものに比べると威力は大幅に落ちてしまい、こびりついた汚れなどは落ちないことがあります。
お風呂のつまりの予防には定期的な掃除を!
お風呂場は家族みんなが毎日のように使用します。それだけにつまりが起こりやすいため、日ごろから掃除をきちんと行って髪の毛や汚れを溜めないようにすることが大切です。それでも、日々の生活を送るうちに、排水管にぬめりやヘドロ、流れた髪の毛などが堆積してしまいますので、定期的にプロにメンテナンスを依頼すると良いでしょう。効果的につまりを予防することができます。